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「哀愁のハゲセレナーデ」第3回 女心とハゲの空

今年で満55歳の「ハゲ親父」。20代でハゲはじめ、「ハゲ歴」は、「鉄人」衣笠祥雄の22年を優に超える30年のベテラン選手。今日も家庭で職場で、ハゲ親父の悲哀の籠った呟きが聞こえます。

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◆「ハゲ」という解釈

哲学者のニーチェが「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである」と言ったとか、言わないとか…。「ハゲている」という事実は存在せず、存在するのは「あの人、ハゲてるよね?」という解釈だけなのだ。

一体、何を持って「ハゲ」と呼ぶのか? 私は確かにおでこから頭頂部にかけて毛が薄いが、全くないわけではない。「おでこが広めの人。おでこの辺りの毛が控えめな人」と呼んでもいいと思う。側頭部、後頭部に関しては「フサフサ」だ。頭全体を指して「ハゲ!」というのはいかがなものだろうか。

たとえば、日本。北海道や東北地方は寒いが、沖縄は暑い。なのに一括りにして「日本は寒い」というのはおかしいだろう? 北海道はおでこ、東北は頭頂部、沖縄は側頭部と後頭部という感じだ。それを妻に言うと「上手いたとえね。確かにアナタのおでこは寒そうだし。でも、北海道じゃないわ。シベリアくらい寒いわよ」。

妻の発言はさておき、そういうわけで私は「(おでこなどは)ハゲではあるが、(後頭部などは)ハゲではない」。今は、二面性のある男がモテる時代だ。「ハゲではあるが、ハゲではない」。そんなミステリアスな私を、多くの女性が放っておかないだろう。

■「ハゲ」はモテる

実際、我が部署のOL・花子(22)は、最近、私を意識しているフシがある。まず、彼女が出社した際に、私をジ~っと見ていたことが何度もあった。その途端に上機嫌になり、「今日も幸せ。頑張って働こうっと♪」と呟くのだ。

とはいえ、彼女の「頑張る」は人並み以下だし、そもそも、入社一年目の22歳のOLが、私よりも遅く出社してくることが驚きだ。だが、きっと私に可愛い自分を見せたくて、朝の化粧に時間が掛かるのだろう。そのくらい目の周りの化粧は真っ黒だ。私を見て幸せを感じるなんて、何て可愛い奴なのだろう。

先日は、ついに行動を起こしてきた。「部長、今週末、食事に連れていってください」と社内メールをしてきたのだ。私がOKし、昼休みに「どこに行こうか」と悩んでいると、「私、予約しておきました」と花子。普通は男が店のセッティングするものなのに、女性がそこまでするなんて…。これには感動した。

「我が社一の高飛車OL」と呼ばれる花子だが、実はこうした謙虚な部分もあるのだ。人も頭も、一つの側面だけで判断するのは、愚の骨頂なのだ。

◆「ハゲ」を見て幸せ

皆、続きが気になるだろうから、週末の花子とのデートについて詳しく話そう。この日、花子から「会社の人に、部長とご飯に行くのを絶対にバレたくないので、別々に会社を出て、お店で合流しましょう」とメールが来た。店の場所も会社の人間が絶対来ないような街。それくらい、誰にも邪魔されたくない恋なのだろう。

店に行って驚いたが、花子が予約したのは高級鉄板焼きの店だった。安い居酒屋では私の顔が立たないと考え、高い店にしたのだろう。できる女だ。食事中、ほとんど会話をせずに、食べること、飲むことに集中する花子。「きっと緊張して話せないんだな」と思い、私から声を掛けてあげた。

「どうして私と食事に?」。すると彼女は「私、給料日前は食費が底をついてピンチなんです。部長なら他に予定もないだろうし、ご馳走してくれるだろうと思って」。照れ隠しに違いない。「最近、出社時に私を見てるよね?」と聞くと「部長の頭を見ると、“あんな哀れなハゲでも頑張って生きてる。私はまだ幸せだ。頑張ろう!”って思えるんです」。

そう言った後、彼女は「食事に集中したいので」と、黙々と飲食をし、帰っていった。その後、私が「昨日は楽しかったよ。また週末に食事に行こう」とメールすると、「私、給料日前しか空いてないんです」との返信。私が花子の巨乳をチラ見すると、「セクハラで訴えますよ」。人も物事も二面性がある。照れ隠しなのだろう。そうに違いない。

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◆「女心とハゲの空」

いよいよ秋に突入した。よく「移り変わりやすいもの」のたとえで、「女心と秋の空」と言うが、男のハゲ具合によって、女心が変化することを私は知っている。実際、今まで出逢った女性たちがそうだったのだ。

私は20代でハゲたのだが、フサフサの時代もあった。そのせいか、学生時代はよくモテた。当時は前髪が頬に掛かるくらいの真ん中分けの髪型で、私が髪をかきあげる度、「キャー! 素敵!」と黄色い声が飛んだ。それが、20代になっておでこが広くなってきた途端、髪の毛をかきあげる度に「キャー! ハゲてる!」と別の声が飛ぶのだ。

中には、高校1年生で出逢ってから、ずっと私に恋をしていてくれた同級生もいた。「私はアナタに永遠の愛を誓う。いつか振り向かせてみせるわ>」と、毎年、手作りで、ハート型のバレンタインチョコレートをくれていた子だ。そのアプローチはお互い別の大学に入ってからも続いていたが、私の髪の毛が薄くなっていくにつれ、バレンタインのチョコが小さくなっていった。

大学4年生のバレンタインデー。私は決心した。「これだけ長く好きでいてくれた彼女に報いよう」。そう決めて、彼女に連絡すると「私、彼氏ができたの。ごめんね」との返事。「あれだけ好きでいてくれたのに何で?」「学校だって卒業の時期が来るでしょ? 私、アナタから卒業したの」。女心は男のハゲ模様で変化する。まさに「女心とハゲの空」である。

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◆「永遠のハゲ」を誓う

同級生にフラれ、かなり薄毛が目立った頭を抱えて泣いた私。後で知ったが、新しくできた彼氏が剛毛だったのは、ある種のメッセージだろう。

その点、我が妻はすごい。出逢った時から私がハゲていたせいもあるが、態度がずっと変わらない。更にハゲようが、バーコードにしようが、関係ないのだ。呼び方も、「若ハゲさん」、「ハゲ様」、「このハゲ!」。常に一貫している。私は「永遠の愛」をついに手に入れたのかもしれない。

人も物事も二面性があり、角度を変えれば見方も違う。それと同じで、夫を「ハゲ!」呼ばわりする妻は、周囲には「鬼嫁」と呼ばれるが、何十年経とうが「ハゲ」呼ばわりの変わらない妻は、「良妻」でもあるのだ。

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最初に話した通り、私は「ハゲではあるが、ハゲではない」。だが、妻に言わせれば私は「どう見てもハゲ」。ならば妻には「永遠のハゲ」を誓おう。朝、そんなふうに思っていたら、「四の五の考えてないで、早く食べて会社に行って! 稼がないハゲなら別れるわよ!」。ハゲは気にしないけどカネは気にする妻。秋の夜風が身に染みる私。ハゲ親父の悲哀は、これからも続いていく…。

イラスト/今井ユリカ

【この記事のバックナンバー】

「哀愁のハゲセレナーデ」第2回 若ハゲはサマータイム