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毛はなぜ抜ける? 仕組みを知り抜け毛の恐怖を迎え撃て!(後編)

「横浜労災病院」皮膚科部長・斎藤典充医師

抜け毛が増えて前頭部や頭頂部から薄くなってくる男性型脱毛症(AGA)。国内ではおよそ1300万人、総人口の約1割に男性型脱毛症が見られるといわれている。巷にはさまざまな育毛法や増毛法があふれているが、眉に唾をつけたくなるような方法がなきにしもあらず。いきなり試して貴重な毛髪を減らす結果になっては逆効果だ。そこで、育毛法や増毛法に飛びつく前にまず発毛・育毛の仕組みと男性型脱毛症の原因を知っておくのが肝心だ。

前回に続き今回も、毛髪治療が専門である「横浜労災病院」皮膚科部長の斎藤典充医師に話を聞いた。

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◆風呂やドライヤーの温度が実は大敵!

男性型脱毛症は、男性のみならず中高年女性にも見られる。問題なのは進行性であることで、手をこまねいていると髪はどんどん薄くなっていく。ヘアブラシに絡む毛髪の数が増え、枕カバーや洗面台に抜け毛がよく散らばっていれば脱毛症の可能性が高い。

「周囲の人が『あの人、髪が薄くなったな』と気づくのは、頭髪が3分の1ぐらい減ったころ。本人が気にするほど周囲は気にしないものですが、早めに対策をとるほうが抜け毛の進行を緩和できることが多いんです」(斎藤先生 以下「」は同)

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髪染のし過ぎは当然よくない

脱毛対策も先手必勝なのだ。抜け毛や薄毛が気になってくると、ついあれこれ試したくなる。美容室で髪にやさしいシャンプーや整髪料をすすめられることも多いだろう。しかし、言われるがままに試していいものだろうか?

「現代人は髪をいじりすぎる傾向にあります。でも過ぎたるは及ばざるがごとし。脱毛が気になる人ほど髪のいじりすぎは禁物なんです。特に、強いパーマや頻繁な髪染めは頭皮や毛髪に多大な負担をかけます。朝晩念入りにシャンプーするのもおすすめしません。頭皮の毛穴から分泌される皮脂は、多すぎると加齢臭などニオイのもとになるのですが、取りすぎると髪を支えている土台が緩んで髪が抜けやすくなるからです」

神経質にシャンプーをした結果、頭皮が荒れて炎症を起こす人もいるという。だから皮脂は多少残っていてもかまわないそうだ。

「使用中のシャンプーが自分に合ったものであれば、薬用や育毛をうたったシャンプーに替える必要はありません。ただし、シャンプー後にドライヤーの熱風をかけすぎないよう注意。頭皮を乾燥させて髪の土台を緩めてしまうからです。熱は髪を傷める原因になることがあります。洗髪する際の湯の熱さに注意してください。血行をよくしようとして、43度以上もある高い温度で洗髪すると頭皮の表面にある皮脂が溶け出し、皮脂膜が失われて頭皮や髪の水分が蒸発してしまうのです」

素人考えで「熱い湯のほうが効き目ありそう」と、思い込むのはやめたほうがいい。

◆「頭皮叩き」は有効だが叩きすぎは危険

昔からコンブやワカメは育毛・増毛に役立ち、トウガラシなどの刺激物は脱毛をひどくすると伝えられてきた。また、髪を剃って坊主にすると太い毛が生えてきて頭髪が濃くなるとか頭皮をブラシで叩くと血行がよくなって髪が生えやすくなるといった説もある。こうした民間療法のようなものも試す価値があるのだろうか?

「トウガラシなどの刺激物をとりすぎたとしても直接、抜け毛に結びつくとは考えられません。コンブやワカメに育毛効果があるという説も疑問です。それよりも栄養バランスのよい食事をきちんと摂ることが大事。ファストフードばかり食べているとビタミンや鉄分が不足して毛根を含む髪全体がボロボロになってしまいますよ。

頭皮マッサージは決して無駄ではないと思っています。血行をよくして毛根への栄養補給を促すのに有効だからです。ただ、先端の尖った金属ブラシなどで叩きすぎて、髪の土台である頭皮を傷つけてしまうと逆効果どころか悪化させてしまうこともあります。髪を剃る方法にはまったく根拠はありません」

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ドライヤーの熱風や先端の鋭いブラシは頭皮にダメージ

 

思い切ってスキンヘッドにしても髪は増えてくれないのだ。薄毛をカモフラージュするために坊主頭にするのはアリだが、育毛のために剃るのは無意味である。

「市販の育毛剤を使う場合、少なくとも3か月~半年は続けてみてください。現状では抜け毛の進行を遅くするのに有効ですが、中には抜け毛が止まる人もいます。ただし、海外で作られた育毛剤には、安全性に問題のある製品も含まれているので注意が必要です」

一時期、中国製の育毛剤がもてはやされた。問題となった製品は「人為的に頭皮をカブレさせて痒みを引き起こし、眠りかけた毛根を呼び覚ます」といった効果があるとされ、日本でも多くの人が先を争って購入した。

「今はブームが下火になりましたが、まだまだ愛用者がいるようです。このタイプの育毛剤は、痒みを起こす細胞と抜け毛を起こさせる細胞の両方に働きかけます。双方が活性化することで『ケンカ両成敗』状態を引き起こし、相殺してしまおうという考え方で作られたものです。理論的に間違いではありませんが、体質によってカブレがひどくなる人がいますので、医師としては積極的にすすめることははばかられます」

◆ささいな変化を見逃さないことが大切

男性型脱毛症に対する病院の治療は内服薬と外用薬が主。内服薬は、テストステロンをジヒドロテストステロンに変換させる酵素をブロックする「フィナステリド」や「デュタステリド」などが処方される。

「テストステロンをジヒドロテストステロンに変換する酵素は、1型と2型があります。1型酵素は頭全体に存在し、2型酵素は前頭部に多く存在しています。現在病医院で用いられている内服薬は2型酵素をブロックする「フィナステリド」と、1型酵素と2型酵素の両方に働く「デュタステリド」の2種類があります。外用ではミノキシジルが主成分の薬が用いられます。ミノキシジル配合製品は市販されていますので、それを試すことは悪くありません」

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髪が少しでも増えたら喜ぶというポジティブ思考がいちばん大切だ

 

ミノキシジルは血管拡張作用のある成分で、1960年代に高血圧の経口薬として用いられていたが、髪を育成して脱毛症を回復させる作用が発見され、脱毛症の治療薬として処方されるようになった。育毛を考えている人にはおなじみの成分だ。

最後に齊藤先生から、薄毛対策をしている人たちへの励ましの言葉をいただいた。

「男性型脱毛症の人にとって大切なのは変化を見逃さないこと。髪がセットしやすくなった、手ぐしでかき上げられるようになったなど、ささいな変化であっても薄毛が好転している兆しです。変化を察知すれば不安が消え、治療を続けるモチベーションが上がります。私は初診から患者さんの写真を毎月撮り続け、半年後の受診の際にまとめて患者さんに見せています。毎月こまめにお見せするよりも顕著な違いがわかるので、みなさん楽しみに通院してくださっています」