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近い将来、「美科学」発のハチミツ育毛剤が登場か!?

東京工科大学応用生物学部美科学研究室 前田憲寿教授

「髪の毛にいい」といわれる民間療法や自然素材はさまざま。しかし、経験上効果があったとか、何となく良さそうだというのは心もとない。こうした素材、しかも美容や化粧品に関わる物質の働きを科学的に検証しているのが、東京工科大学の前田憲寿教授だ。前田教授の研究室では、最近の研究でハチミツが髪に良いと判明したという。果たしてその効果とは?

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◆ハチミツ液でキューティクルが守られた!

「私は応用生物学部の所属になるのですが、専門は『美科学』といいます。耳にしたことのない学問だと思われるでしょう。名前の通り『美』を科学的に研究するのです。生物学や生化学、薬理学だけでなく、心理学や脳科学など幅広い領域の知識を必要とする点が特徴です」

美科学の研究対象は化粧品や健康補助食品、アンチエイジングなどだが、当然、髪の毛もそこに含まれてくる。さまざまな素材や物質が、肌や髪や老化にどう影響するかを日々研究している。

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栄養価が高く抗酸化力も強いハチミツは毛髪にも効果大

 

ハチミツの紫外線に対する働きについては、ある女子学生の提案が発端だったという。

「髪の毛がUV(紫外線)にさらされるとダメージを受け、ケアをせずにいると傷んで変色したり切れ毛を起こしたりすることが知られています。これはUVに当たることよって活性酸素という、他の物質にダメージを与えるほど強い反応性を持つ物質が発生するからです。特に脱色剤を使っている髪の毛や濡れた髪の毛では、ヒドロキシラジカルという特に強い活性酸素が生まれます。活性酸素に対抗するには抗酸化力の高い物質が有効で、その一つがハチミツだったのです」

ヒドロキシラジカルの発生には水素が関与しているという。髪の毛の脱色には過酸化水素が使われることがあるし、濡れた髪には文字通り「水(H2O)」が含まれている。ということは炎天下の水泳は、活性酸素を発生させまくっていることになる。水泳でなくても汗をかくだけで髪の毛には大ダメージだ。

「ハチミツの抗酸化作用については国内外で多くの論文が発表されています。また肌の創傷治療に使われたり、日本薬局方(厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見をもとに定めた医薬品の規格基準書)では唇の荒れ防止効果が認められたりしています。提案者の学生は『きっと髪の毛にもいいだろう』という仮説を立てたのです」

この研究は、化粧品メーカーの「ビューティーエクスペリエンス」と共同で行われた。ハチミツは一種類ではなく、クローバーやブルーベリーや最近話題のマヌカなど8種類の花由来のものが使われた。実験方法はハチミツを溶いた水に浸けた髪の毛に、UVを当てるというもの。人為的に活性酸素を発生させてキューティクルの状態を調べたのだ。

結果からいうと、すべての種類のハチミツで活性酸素を消去する働きがあることがわかった。UVを当てるとキューティクルの縁の部分にだけヒドロキシラジカルが発生するのだが、ハチミツ液に浸けた髪の毛には発生せず、キューティクルは守られていたという。

「キューティクルを守るには実はシリコンシャンプーもいいのです。シリコンも髪の表面を覆って保護してくれますから。最近は『自然派』が流行しているせいかノンシリコンが人気ですが、シリコン入りは髪のツヤだけでなく保護の役割もあるので、不安に思う必要はありません」

◆頭皮の炎症にも強い働きが

「ハチミツの働きでもう一つわかったことがあります。紫外線による活性酸素の発生で、脂質の一部は過酸化脂質に変化するのですが、ハチミツを付けた髪では発生が抑えられていたのです。過酸化脂質は細胞を傷つける元凶の一つで、当然、頭皮にも悪影響を与えて炎症などの原因になります。ハチミツは頭髪・頭皮のケアに好結果をもたらすというデータが取れたのです」

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ハチミツに浸けずに紫外線を当てた毛髪(上)との比較。過酸化脂質を検出できる蛍光試薬を用いると、ハチミツを加えた毛髪では発生が少ないことがわかった

 

髪の毛が心もとなくなっている人にとっては、キューティクルよりも頭皮ケアに役立つというのは有効な情報だ。しかし「ハチミツなんか頭に塗ったらベタベタして困る」とは、誰もが思うところ。そこはハチミツの凄いところで、0.01%という非常に低い濃度でも効果があったという。この濃度は1リットルの水に1グラムのハチミツを溶かした状態。まずベタつくことはないので、自分でハチミツ液を作って髪に塗ってもいいわけだ。

何がここまでの強い抗酸化力を示すのか? ハチミツはほとんどが糖だが、微量のアミノ酸や酵素も含まれている。この実験では解明できなかったが、前田教授によると研究が進んでいるので来春あたりには発表できるという。

ハチミツの研究結果は2016年3月の『日本薬学会』で発表された。前田教授の研究室には、現在もスキンケアやアンチエイジング、美容機器など10社以上の美容関連企業から基礎研究の話が来ているとのこと。

「美科学の分野でも育毛関連商品は、他の化粧品やスキンケア製品と異なる特徴があります。それは『ブランド力に左右されない』こと。つまり大手の製薬会社や化粧品会社でなくても、注目されやすいのです。私は以前から育毛剤の研究を続けていて、美科学発の育毛製品を近い将来、世に出そうと思っています」

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前田憲寿(まえだ・かずひさ)/東京工科大学応用生物学部教授。医学博士/専門分野は化粧品科学、美容皮膚科学/日本美容皮膚科学会、日本薬学会、日本色素細胞学会、日本香粧品学会所属。

九州大学大学院薬学研究科修士課程修了。東北大学大学院医学研究科(皮膚科学)にて医学博士取得。2007年より現職。北京工商大学客員教授。

著書に『美肌科学の最前線』、『毛髪再生の最前線』、『光老化科学の最前線』(シーエムシー出版)。