「哀愁のハゲセレナーデ」第2回 若ハゲはサマータイム


今年で満55歳の「ハゲ親父」。20代でハゲはじめ、「ハゲ歴」は、「鉄人」衣笠祥雄の22年を優に超える30年のベテラン選手。今日も家庭で職場で、そんなハゲ親父の悲哀の籠った呟きが聞こえます。

◆名刺の裏に「ハゲ」

ハリウッドスターのブルース・ウィリスが『男ってのは髪の量で決まるんじゃない、ハートで決まるんだ!』と言ったとか、言わないとか…。真意はともかく、確かにハゲはフサフサの人よりもハートが優れている部分がある。

たとえば陰口。ハゲは1年365日、どこかしらでハゲネタを囁かれている。電車では「あのハゲてるサラリーマン、頭が暑苦しいね」と女子高生に嫌がられ、職場では部下に「ハゲ部長」と煙たがられるのだ。だが、ハートの強い我々は、その程度ではヘコたれない。

時々、部下が私を呼ぶ際、「ハ…」といった後に「いや、M川部長」と言い直すことがある。最初の「ハ…」は普段、陰で「ハゲ部長」と言っているから出てしまうに違いない。中には「ハ…」までいって、「ここで言い直しても違和感があるよな」と思うのか、「ハ…ナゲ毛(鼻毛)出てますよ」と言い換える部下がいる。「失言を上手くカバーした」とドヤ顔の部下だが、そっちの方が失礼だ。

昔、「俺は絶対、陰で『ハゲ』って言われてる」と妻に悩みを相談した時があった。彼女の答えは「被害妄想でしょ。気にしすぎよ、このハゲ!」。もはや悩むのがバカバカしくなってくるのである。

今では妻の「ハゲ」は挨拶みたいなもので、「おはよう」「おやすみ」と同じ。「仕事頑張ってね。ハゲ!」は「仕事頑張ってね。いってらっしゃい!」だと思えばいいのだ。

◆失われた「ハゲ利権」

若い頃からハゲをやっていると、ハートを鍛えられるが、そのままでは限界もある。「ハゲ!」と言われた際、上手く対処するテクニックを紹介しよう。妻の「ハゲ」を挨拶だと思うように、言葉を自分の中でポジティブなものに変換すればいいのだ。たとえばこんなことがあった。

私の仕事は取引先と接する機会が多い方だ。名刺を交換した際、「忘れないよう、後で相手の特徴を名刺の裏に書く」という人がいるが、私は若い頃、絶対に「若ハゲ」とメモされてきた。これは被害妄想ではない。渡した名刺を誤って落とした取引先の人がいて、それを拾ったら、裏に「若いハゲ」と書いてあったからだ。ここで「変換」のテクニックを使う。

当時は社内に20代、30代でハゲている人はいなかったので、「A社の若ハゲ=私」だった。「やった! ハゲてるおかげで覚えてもらえる! ハゲという特徴に気付いてくれてありがとう!」と脳内で前向きに変換し、マイナスをプラスに変える。そうすれば、むしろ、「若いハゲ」と書かれることが喜ばしく思えてくるのだ。

だが、最近、同期にハゲが増え、「A社のハゲ=私」ではなくなってきた。私の「ハゲ利権」が、髪同様に失われつつある。A社の「ハゲのパイオニア」は私だというのに…。先日なんて、取引先に「M田さん」と間違えられそうになった。私はM川だ。これからは名刺の裏にぜひ、「髪の毛が『川』の字のようにバーコードになっているハゲ」とメモしてほしい。

【部下たちはいつも私の話題で持ち切りだ】

 ◆若ハゲはサマータイム

会社でもそうだが、今となっては社会で「ハゲたオジサンの一人」という扱いの私。だが、若い頃は違った。飲み会などで初めて会った人たちは、私の頭を見て「見てはいけないものを見てしまった」という顔をする。または、私の額に視線を合わせて話す人もいた。私の目はそこにはない。その点、妻は大物だった。最初から「ハゲてますね」と言ったのだから…。

妻の話はさておき、私のハゲに対し、「何かあったのでは?」といらぬ心配をする人も多かった。「びょ、病気か何かですか…?」「家庭や仕事ですごくストレスを抱えてるんですね…」という人たち。安心してほしい。私の場合、ただの若ハゲだ。親も若ハゲだったようだし、私は敷かれたレールの上を歩いてきただけなのだ。

当時は「ただの若ハゲですよ」と返していたが、今思えば、面白味に欠ける。今の私ならこう言うだろう。「髪の毛に『サマータイム』を導入したんです。時間を一時間早めることで、仕事を早く終わらせて夜を長く楽しむように、髪のオシャレを楽しむ時間を早めに終わらせて、髪の毛から解放された時間を長く楽しむのです」。

我ながら名言だと思う。男性の半分以上はいつしか薄毛や抜け毛の心配をする。それなら早めにハゲて、その不安をぬぐい去ってしまった方が有意義というものだ。これはぜひ、世界標準にしていただきたい。物は考えよう。何事も前向きな言葉に変換すればいいのだ。

 【若ハゲはサマータイム? 頭に太い毛が皆無】

 ◆妻は「ハゲネタ」製造機

「変換」といえば、妻は何でもハゲネタに変換する。たとえば平日の昼休み。その日は妻が電車で実家に行くと聞いていたのだが、天気予報を見ると荒れる模様だった。予報をあまりチェックしない妻を心配し、LINEで『今日は午後から激しい雨らしいぞ』と送ってやった。その返信が『ハゲしいのはアナタの頭だけで十分だわ』。人の善意をハゲで返す。それが我が妻なのだ。

中学生の次男がテストで悪い点を取ってきた時はもっと酷い。「今のうちにちゃんと勉強しておかないとダメよ。ホラ、もっとお父さんを見なさい!」と妻。「『見なさい』? 『見習いなさい』の間違いじゃないのか?」と言うと、「間違ってないわよ。『もっとお父さんを見なさい』は、『もっとハゲ見なさい(励みなさい)』ってことだから」。

さらに、「勉強に身が入るよう、闘魂注入よ!」と息子の肩を軽く叩くと、続けて私の頭をペチンと叩き、「アナタには毛根注入よ!」。大リーグでイチロー選手が3000本安打を達成したが、天気もゲームも勉強も、全てをハゲネタにする妻は、「安打製造機」ならぬ、「ハゲネタ製造機」なのだ。

 ◆「ハゲネタ」はディナーの後に

次男が晩ご飯を食べている時も、妻のハゲネタは続く。中学生にもなって「ナス嫌~い」という食わず嫌いの息子に対し、妻はすかさず「食べたら美味しいのよ。毛嫌いしないの!」。もう、この時点で「これは来るな…」と思ってしまう。予感は的中した。「お父さんは毛嫌いしないで何でも食べるわよ。髪の毛は嫌いなのか、抜けちゃったけどね」。せめてハゲネタは食事の後にしてほしい。

毎朝、妻に「仕事頑張ってね、ハゲ!」「今日の晩ご飯はカレーよ、ハゲ!」と言われている私。だが、今朝は違った。朝、家を出ようとすると、妻が「アナタ、歩きスマホはしちゃダメよ。交通事故とか、私、心配で仕方ないわ」。結局、「ハゲ」という言葉は言わなかった。何だ? 何があったんだ? そう思い、帰宅後に質問してみた。

「何で俺が事故に遭うのをそんなに心配してたんだ?」

「夫婦でしょ? 夫を心配するのは当たり前じゃない」

その言葉にウルッときた途端、妻が続ける。「だって、アナタには事故じゃなく、病気で死んでほしいの。お葬式の時、『毛が(ケガ)一つない、キレイな顔であの世に行きます』って言いたいもの。それを考えたら事故が心配になっちゃって…」。

死ぬ時までハゲをネタにされることが決まった私。これからも、何かする度にハゲをネタにされるだろう。だが、ネタにされるのはハートを鍛える良い機会なはず。「目指せ、ブルース・ウィリス!」というわけだ。「本当はジョニー・デップを目指したいんだけど…」。そんな本音を隠しつつ、ハゲ親父の悲哀は、これからも続いていく…。

 【私に毛根、息子に闘魂注入。そんな妻は無駄に巨乳】

イラスト/今井ユリカ

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