国内屈指の臨床例を誇る医師が語るAGAと遺伝の真実


「メンズヘルスクリニック東京」小林一広院長

女性専門のクリニックは昔から多く存在しているが、男性の悩みに応えてくれる専門病院はまだ少数だ。「メンズヘルスクリニック東京」は、男性が年齢とともに抱える問題、こと髪に関して先鞭をつけて1999年に開院したクリニックである。以来、年間6万8000人の患者を診療し、臨床例は17年間で延べ患者数=約50万例と国内有数の症例数を持っている。現在では男性更年期やEDなどの治療も行う、まさに「オトコのためのクリニック」といえる。

小林一広院長に、頭髪治療の内容や患者はハゲとどう向き合うべきかなどについて聞いた。

◆育毛は受験に例えて考えるべし

「世間ではひと口にハゲ、薄毛といいますが、実は薄毛には医学的な定義はありません。薄毛とはあくまでも主観的な概念で、自分が薄毛と思うか思わないかの違いでしかないのです」

「メンズクリニック東京」の小林一広院長はこう断言する。小林院長は国内最大数の治療実績を誇るAGA(男性型脱毛症)のパイオニアといえる存在であり、おそらく日本で最も多くの「薄毛」に悩む患者を診療してきた医師である。小林院長の治療を受けたことによって、ツルツル頭から「地肌が気にならないほど髪が増えた」患者の例は枚挙にいとまがない。だが「それでも…」と小林院長は続ける。

「すべての患者さんが100%満足していると断言できないところが、AGA治療の難しさなのです。髪の毛をどこまで増やしたいのか、患者さんの願望は人によってさまざまです。期待値を超える発毛に成功する人もいれば、残念ながら期待値に届かない人もいます」

【診察中の小林院長。精神科医でもあるため患者を心身両面からサポート】

【診察中の小林院長。精神科医でもあるため患者を心身両面からサポート】

小林院長は自身の治療を大学受験の予備校に例えて説明する。

「患者さんを受験生だとすると、最高の理想となるフサフサの髪は、東大・京大クラスの国立大学だったり、一流私大だったりするわけです。東大にどうしても入りたい人が中堅クラスの大学に入った場合、不満が残ることがありますよね。同様に発毛に対する理想をどこに設定するかで満足度は変わってくるのです」

この比喩でいうならば小林校長(院長)は、学力(髪が生えやすい状態)を引き上げることはできるが、すべての受験生(患者)が希望する第一志望校合格(本人が理想とする発毛効果)を確実にするのは難しいということである。

「抜け毛を防ぎ、薄くなった髪を元通りにすることは簡単なことではありません。20歳のころの頭と同じようにしたいと考える人は、多少髪が増えても成果が出たとはあまり考えてはくれません。一方、薄くなったところに少し産毛が生えただけでも希望を持つ人もいます。ポジティブに考える人のほうが治療に対する姿勢も前向きです」

ハゲるかハゲないか、治療の効果が出やすいか出にくいかは遺伝や体質によるところも大きい。中でもAGAの話題で必ず上がってくる物質が「男性ホルモン」。これはいったい何者で、何をやらかしているのだろうか?

【改善例:35歳 M字型とO字型脱毛の進行タイプ(左から初診時・3か月後・6か月後)。6か月の治療で、額まで発毛していることがわかる】

◆男性ホルモンは諸悪の根源なのか?

「男性ホルモンにはいくつか種類がありますが、最も割合が多いのがテストステロンというホルモンです。これは睾丸の精巣で主に作り出され、骨や筋肉を強くしたり男性の性機能の維持に貢献したりする、いわば『男らしさを作る』『男を男たらしめる』物質なのです。ヒゲの発現や射精の促進などにもかかわっています」

ところがテストステロンが特殊な酵素と結びつくと、DHT(ジヒドロテストステロン)という物質に変わるという。このDHTがAGAを引き起こす原因物質なのだ。DHTが体内に増え髪の毛に作用すると、発毛の司令塔である毛乳頭を萎縮させて毛母細胞の成長が抑制されるようになる。その結果、髪の毛が太く長く育つ前に抜け落ちてしまい、薄毛が目立つようになってしまう。

「テストステロンが、男が男らしくあるためのガソリンのようなものだとしたら、DHTは何倍ものパワーを持ったハイオクガソリンのようなものです。加齢とともにテストステロンは減少していきますが、代わりにDHTは増えていきます」

ジヒドロテストステロンはテストステロンの活性型ともいわれ、子供のころは男性器の成長を促すなどの効果があるが、中高年からは部位によっては良からぬ働きをしてしまうということになる。

男性ホルモン自体は悪役でもなんでもない。もし男性ホルモンが髪に悪さをするというならば、テストステロンの分泌量が最も多い20~30代の男性こそ薄毛にならなくてはならない。ところが現実では若い世代はおおむね髪がフサフサである。年を取ってテストステロンが減少してDHTが増えていくことが、AGAの引き金というわけだ。

しかし、DHTが増えているはずの中高年であっても髪がフサフサのままの人がいるのはどういうわけなのだろう。

「髪がフサフサになるかツルツルになるかの分かれ道は、発毛を促す毛乳頭と毛母細胞にあるDHT受容体の感受性の違いだと考えられます。受容体のDHTに対する感受性が高ければ、DHTが少量であっても過敏に反応してAGAを進行させます」

フサフサかツルツルかの明暗を分ける受容体の感受性は、遺伝で決まるという説がある。ということは父親がハゲていれば息子はやはりハゲる可能性が高いのか?

「単純にそうとは限りません。そもそも遺伝は父親からだけではなく母親からも受け継ぐものです。父親と母親の遺伝子は子供に引き継ぐときに組み合わされ書き換えられますから、父親の体質とまったく同じ体質の息子になるとはいえないのです」

【改善例:40歳 O字型脱毛(左から初診時・3か月後・5か月後)。後頭部を覆うように発毛している】

【改善例:40歳 O字型脱毛(左から初診時・3か月後・5か月後)。後頭部を覆うように発毛している】

◆偏ったケアはケアではない!

自分の家系を見て遺伝的要素がなければ安泰なのだろうか? 環境などの後天的なものは関係ないのか? 小林院長はこう言う。

「AGAには食生活や運動といった日常的な習慣による環境要因も無関係ではありません。私たちのクリニックではAGAに悩む患者さんに対して、フィナステリドやミノキシジルを主体とした効果の高い薬などで治療するとともに、患者さん自身の生活環境改善へのアドバイスも行っています」

小林院長によると、AGAの予防・改善には専門医に相談することが第一で、それ以外に栄養のバランスが取れた食生活と適度な運動が必要であるとのこと。でも、すぐにできる促成栽培的なものはないのだろうか。ワカメをいっぱい食べるとか、ブラシでたたくとか…。

「実は特にないのです。ある特定のものを食べれば髪が増える、という話に医学的根拠はありません。髪だけを元気にする、という考え方そのものがナンセンスなのです。亜鉛やアミノ酸など髪の毛にいいといわれるものも、頭皮にだけ届くのではなく体全体に働きかけるものです」

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【改善例:50歳 M字型とO字型脱毛の進行タイプ(左から初診時・3か月後・7か月後)。50歳を過ぎてもあきらめることはない】

シャンプーの際に、髪や地肌を刺激しようと強くこすることも逆効果だとのこと。頭皮を荒らして炎症が起こる可能性が高いからだという。一つの食材に固執して食べ続けることも日常生活のストレスの一因になりかねない。やり過ぎることは、髪にとっても体にとってもよくないことなのである。

そもそも薄毛でなくなる、ハゲを治すという行為そのものが、本人の「幸せ」を追求することなのだ。フサフサの髪を追求した挙句、健康を損ない「人生の幸福」を失っては本末転倒で意味がない。

小林一広(こばやし・かずひろ)/医療法人社団ウェルエイジング メンズヘルスクリニック東京 院長。

精神保健指定医、日本臨床精神神経薬理学会専門医、特定非営利活動法人アンチエイジングネットワーク理事、特定非営利活動法人フューチャー・メディカル・ラボラトリー理事。
北里大学医学部卒業後、同大学病院でメンタルヘルスケア中心の医療に従事。1999年新宿に城西クリニックを開院。精神科医として皮膚科医、形成外科医と共に心身両面からの頭髪治療に力を注ぐ。2014年東京丸の内に移転し、メンズヘルスクリニック東京と名称を変え、男性の外見と内面を医療によってサポートするクリニックを立ちあげる。

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