「哀愁のハゲセレナーデ」第1回 夏の到来は頭から


今年で満55歳の「ハゲ親父」。20代でハゲはじめ、「ハゲ歴」は、「鉄人」衣笠祥雄の22年を優に超える30年のベテラン選手。今日も家庭で職場で、そんなハゲ親父の悲哀の籠った呟きが聞こえます。

◆ハゲで分かる春夏秋冬

ソフトバンクの社長、孫正義が「髪の毛の後退ではない。私の前進である」と言ったとか、言わないとか…。真意はともかく、確かにハゲはフサフサの人よりも優れている部分がある。

ハゲは春夏秋冬に敏感だ。なにぶん、頭皮という肌の露出が、他の人よりも多いのだ。暑さも寒さも感じやすいのは当然。吹く風を頭で感じ、「そろそろ春の訪れだな」としみじみ思うなんて、フサフサのヤツには到底マネできないことだろう。

そして、微妙に残された髪の毛はセンサーにもなる。梅雨が近付くと、湿気で髪の毛がしんなりする。こちらは毎日バーコードをセットしているわけで、その変化にはすぐ気付く。女性が「今日は化粧のノリが悪いの (>_<)」と呟くように、我々は「今日はバーコードのセットが上手くいかないの (>_<)」と呟くのである。

冬にデート中、頬や手に落ちた雪を見て、「ホラ、雪よ」なんて囁き合う恋人たち。我々の場合は違う。まず、頭に落ちてきた雪に気付くのだ。フサフサよりも何秒かだが、我々のほうが先に感動できる。どうだ、羨ましいだろう?

【梅雨のバーコード セットは超高度】

◆ハゲは電車で夏到来を知る

「ハゲあるある」の一つに、電車で居眠りしている際、後ろの窓に頭が当たり、「冷たっ!」と起きる伝統芸能のような技がある。我々には目覚まし時計なんて必要ない。

当たり前のことだが、これは特に気温で窓が冷たくなる冬に最も多い現象といえる。逆に、夏はそれほど「冷たっ!」とならない。そこで「冷たくない…。そろそろ夏の到来かな」と電車で一人、思うのだ。また、頭で感じるエアコンの風の温度、頭の日焼けなど、ハゲが夏に気付く要素は多い。

その一方で、大抵のハゲにとって、夏は天敵ともいえる季節。前述の梅雨同様、湿気が多い上、頭からにじみ出る汗で更に髪の毛が「ペター」っとなってしまう。そうなってくると、ハゲがしがちなのが帽子を被ること。これは安易にやってはいけない。

確かに帽子はハゲを隠す上では最も効果的なものの一つだ。皮膚をさらしている以上、常に紫外線の影響を受ける我々にとって、それをブロックしてくれるという働きも持つ。

古来、人間が火を手に入れた時のように、ハゲにとって帽子とは天から与えられたありがたい道具だ。だが、火も使い方を間違えると痛い目にあう。帽子もそうだ。被ったが最後、家に帰るまで取ることはできない。なぜなら、帽子を被ったことによる湿気で、いつも以上に髪の毛が「ペター」っとなるからだ。額にへばりついた髪の毛の模様は、自分では予測不可能。時に螺旋状に広がり、時にはナスカの地上絵のようになる。

その上、蒸れている分、汗も凄いことになる。帽子を取る際は近くに人が不在の時にしないといけない。それを破れば、「クサイ」「汚い」「みすぼらしい」という目で見られることは確実。そして、蒸れるのは頭皮の衛生上よくない。ハゲが進行する可能性も高い。帽子というのは、それくらい諸刃の剣なのだ。

【帽子を脱いだだけで 女子から黄色い声が飛ぶ】

◆ハゲ親父への妻の愛

私と妻の出逢いは、お互いが22歳の時だ。その時、既に頭皮は薄くなっていたせいか、妻にとって私は「どんどんハゲた人」というより「元からハゲている人」という認識だろう。その分、私の頭に対してストレートな物言いをしてくる。

結婚後に薄くなってきた場合なら、奥様方は最初は気を遣うだろうし、「ハゲ夫」との付き合いが短いため、地雷を踏むこともある。だが、我が妻の場合、私同様、ハゲ夫との付き合いが30年以上のベテラン選手。最初から小細工せず、「ハゲ!」と平気で言う。地雷は踏んでも気付かないか、そのまま踏みつけて地雷を壊すのだ。

当初は私も抵抗した。「ハゲとは何だ! 失礼だろ」。すると彼女はこう言った。「アナタと短い付き合いをする気なら、気を遣ってハゲに触れないのもいいわ。でも、アナタとはずっと一緒に生きていきたいんだもの。だったら、アナタのそのハゲを受け入れて、遠慮しないのが愛だと思うの」。

物は言い様である。当時の私は不覚にも感動してしまい、「分かった! 遠慮なく言ってくれ」と言ってしまった。数年後に後悔したのだが、今更嘆いても仕方ない。髪の毛同様、過去は戻って来ないのだ。

◆「若ハゲさん」から「ハゲ様」に

ここ数年、妻は私のことを「ハゲ様」と呼ぶ。「様」と付くが、これは別に喜ばしいことではない。妻が私を「ハゲ様」と呼ぶ理由はこうだ。

付き合い始めの頃、妻は私をよく「若ハゲさん」と呼んでいた。今思えばかなり失礼な女である。文句を言うと、「『若旦那さん』みたいな感覚よ」という答え。とんちんかんな考えだが、「それカッコイイ」と思ってしまった若かりし頃の私はもっとバカだ。

結婚し、歳を重ね、50歳くらいの時だろうか。「もう若くないんだから、『若』の文字はいらないわね」。そして「ハゲさん」と呼び始めたのだ。これには我慢ならず、「『ハゲさん』はないだろ!」と、私は妻に文句を言った。

すると妻は珍しく私の話を聞き入れ、「じゃあ、アナタの好きなふうに呼んであげる。だから提案して」と言ってきたのだ。そこで私はこう言った。「『若旦那さん』の感覚で『若ハゲさん』と呼んだんだろ? だったら、『若旦那さん』が後に『若』が取れて『旦那様』になるよう、『ハゲ様』と呼べ!」。妻は「分かった。そうするわ」となり、以来、「ハゲ様」と呼んでいる。

先日、妻が「アナタ、何で『ハゲ様』にしたの? 別に『ハゲ』って入れなくても良かったのに」と言った。確かにそうだ。なぜ、普通に「『旦那様』と呼べ!」とか提案しなかったのか…。やはり失った髪の毛同様、後悔しても過去は戻らないのである。

◆どっちが露出狂?

そんな妻だが、いつまで経っても心は乙女。なぜ、女性というのは、異性が望むのと逆のことをするのだろう。若かりし時、高校や大学の同級生は、夏にブラが透けたり、前かがみになった際に谷間が見えるのを嫌がり、それを見る私を「いやらしいわね!」と侮蔑の表情で迎えたものだ。恋人であった妻も、家ではともかく外では「アナタって四六時中、エロイことしか考えてないの? サイテー」と言っていた。

それが今は違う。妻は歳を重ねるごとに、露出を増やし、真夏は谷間が見え放題。ブラは透けるというより、思いっきり見えている状態だ。もはや、腕なのか足なのか分からない二の腕も、「太もも」いう名がピッタリの足も、出しに出しまくっている。

そこで私は言ってやった。「お前、それじゃ露出狂だよ。自分の年齢を少しは考えろよ!」。すると妻は怒るでもなく、冷静な表情で、「アナタのほうが露出狂でしょ? 私は夏ぐらいだけど、アナタは年中、頭を露出してるじゃない!」。

暑さは人間を狂わせる。いつもだったらやり返される想像がついて、ストップするのについ言ってしまった。妻の反撃は留まるところを知らないようだ。

【人生 山あり 中年妻の谷間あり】

◆ハゲ親父に妻の反撃は続く

夏は汗をかく。そのため、妻は一日に2度、3度、シャワーを浴び、頭まで洗う。「洗う頻度が高いから、シャンプーがすぐなくなっちゃうわ。でもアナタはいいわよね。もしシャンプーがなくても、石鹸で体から頭まで一気に洗えちゃうんだもの」。

そして私がお風呂から出てテレビを見ていると、「夏とはいえ、油断しちゃダメよ。お風呂の後にすぐ髪の毛を乾かさないと、風邪ひくんだからね。あっ、アナタの場合、乾かす髪の毛がないか!」。そう言って寝室に戻る妻。

「露出狂」の一言でこの仕返し。これからも、何か失言する度に痛い目を見るのかもしれない。「ああ、髪の毛の悩みが全くなかった10代の夏が懐かしいなぁ」。昔を振り返り、現実を頭皮、ではなく逃避したくなる私であった。ハゲ親父の悲哀は、これからも続いていく…。

イラスト/今井ユリカ

 

 

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